2025.10.27
ニュース
【論文】結腸癌における至適切離腸管長と中枢方向の郭清度に関する国際共同前向きコホート研究(T-REX)の結果がTRIの東出智嗣と竹綱正典を共著者としてESMO Gastrointestinal Oncologyに掲載されました。

【論文の概要】
結腸癌手術では、腫瘍とともに腫瘍が浸潤している可能性のあるリンパ節を郭清することが重要ですが、郭清範囲には国際的に大きなばらつきがあります。日本では長年、切離端までの距離を10cm確保する“10cmルール”が腸管切離レベルの基準とされてきましたが、大腸癌取扱い規約第7版において支配動脈の分布を基準に領域リンパ節が規定され、これに応じた腸管切離レベルが設定されました。しかしながら、“10cmルール”を凌駕する意義があるかの検証は行われておらず、さらに短縮が可能との意見もあります。そこで、日本の大腸癌研究会が中心となり、6カ国31の主要病院で手術を受けたステージI-III結腸癌患者3647人を対象にリンパ節郭清の範囲を調査しました。
その結果、結腸周囲への10cmを超える浸潤のある患者(0.2%)や原発腫瘍から10cm以内に栄養血管が存在しない患者(0.3%)は、国に関わらず稀であることが明らかになりました。また中央リンパ節への転移発生率は約3%(T1腫瘍で0.2%、T4腫瘍で7%)で、脾曲部腫瘍ではより低い値でした(0.5%)。根治性のレベルが高い手術を実施した場合でも、Clavien-Dindo分類Ⅲ以上の合併症の発生率や30日死亡率に悪影響を及ぼさないことがわかりました。これらの結果は”10cmルール”が国際的な規準となりうるものであること、中央リンパ節郭清は、原発腫瘍のステージや部位により選択されるべきであり、ルーチンで行うべきではないことを示唆しています。

TRIは本研究において、データセンター、スタディマネジメント、統計解析などを担当しました。

H. Ueno, N. K. Kim, J. C. Kim, P. Tsarkov, W. Hohenberger, R. Grützmann, N. E Samalavicius, A. Dulskas, J.-T. Liang, P. Quirke, N. West, A. Shiomi, M. Ito, M. Shiozawa, K. Komori, K. Matsuda, Y. Kinugasa, T. Sato, K. Yamada, Y. Hashiguchi, H. Ozawa, Y. Kanemitsu, T. Kusumi, H. Ike, Y. Takii, H. Matsuoka, Y. Toiyama, J. Watanabe, A. Ishibe, H. Sonoda, K. Koda, F. Fujita, M. Ohue, M. Itabashi, M.Taketsuna, S. Higashide, Y. Ajioka& K. Sugihara
Lymph node mapping-based optimal bowel-resection margin and central radicality in colon cancer surgery: an international, prospective, observational cohort study
ESMO Gastrointestinal Oncology, Vol.9, Issue C

URL:https://doi.org/10.1016/j.esmogo.2025.100231