2025.06.23
ニュース
【学会発表/口演】岡本里香(TRI 学術研究支援室・医療開発研究グループ・デジタルイノベーショングループ所属)が第7回日本メディカルAI学会学術集会のシンポジウム「創薬・医療におけるAI 開発―ライフインテリジェンスコンソーシアムLINCの取り組み―」で、「IT・AI技術とマッチング理論を活用した患者×臨床試験マッチングプラットフォームの開発」を講演します.

【学会発表/口演】岡本里香(TRI 学術研究支援室・医療開発研究グループ・デジタルイノベーショングループ所属)が第7回日本メディカルAI学会学術集会のシンポジウム「創薬・医療におけるAI 開発―ライフインテリジェンスコンソーシアムLINCの取り組み―」で、「IT・AI技術とマッチング理論を活用した患者×臨床試験マッチングプラットフォームの開発」を講演します.

【発表概要】
シンポジウム8
日 時:6月28日(土)第1会場 14:05-15:25
演 題:IT・AI技術とマッチング理論を活用した患者×臨床試験マッチングプラットフォームの開発
筆頭演者:岡本 里香
所 属:(公財)神戸医療産業都市推進機構 医療イノベーション推進センター学術研究支援室

【抄録】
国内の約 8 割の臨床試験が登録目標を達成できず、被験者リクルートの遅延が深刻化していることは我が国の創薬力向上・治験活性化に喫緊の課題です。現在の患者向け治験情報サイトは患者が用いる多様かつ曖昧な表現に十分対応できず、詳細情報は医療専門家向けの jRCT**(Japan Registry of Clinical Trials)に遷移するため、専門用語の理解が困難であるなど、患者が必要な臨床試験情報へ容易に到達 できません。特に希少疾病・難病領域では、患者自身も治験情報を求めているもののアクセス性が十分 ではなく、全国の患者が適切な臨床試験情報にアクセスできる環境整備が急務です。このような背景を踏まえ、一般社団法人ライフインテリジェンスコンソーシアム(LINC)*のWG08 PJ-CONNECT では、IT・AI 技術と経済学的マッチング理論を学際的に融合し、患者が主体的に臨床 試験情報を検索・選択できる全国規模のプラットフォーム構築を目指しています。本研究開発では、効率的な被験者リクルーティングを実現し、日本の治験効率化に貢献することを目的に以下の3点を中核 にした取り組みを進めています。1.選択・除外基準の精緻な構造化:jRCT に登録された臨床試験に参加する選択・除外基準(自由記載)に対し、LLM による自然言語処理を適用し、高度なデータ構造化を実現します。2.患者表現系の生成:上記で構造化されたデータを基盤に、患者が日常的に使用する多様な非専門用 語を吸収する患者表現系を生成する手法を検討します。患者表現系は、患者入力情報と臨床試験情報を 高精度にマッチングさせるための基盤となります。3.独自マッチングメカニズムの開発:経済学における安定マッチングアルゴリズムを応用し、医療機関の関与も考慮した独自の患者 - 臨床試験マッチングメカニズムを開発します。これにより、患者が入力する情報、PHR のデータや臨床試験への参加意向に基づき、最適な臨床試験情報との自動的なマッチ ング・レコメンデーションを実施し、患者集積率の向上を目指します。 本プラットフォームの実現により、患者は自身が入力する情報等に基づき、全国の臨床試験を横断的・ 網羅的に探索・比較し、最適な試験を主体的に選択できるようになります。臨床試験へのアクセス性が 向上することで、患者の潜在的な参加意欲を顕在化させ、リクルート遅延の解消と日本の治験競争力の向上、ひいてはドラッグラグ・ロスの改善に貢献するものと考えられます。本講演では、この革新的な患者×臨床試験マッチングプラットフォーム構築に向けた、LLM による jRCT からのデータ構造化の手法とその有効性について詳細をご紹介します。
 * LINC:アカデミアの触媒機能により、IT 業界とライフ業界の連携を促進し、AI 戦略によるライフ業界の産業競争力を加速することを目指す、アカデミア・IT・ライフ系企業からなる団体 ** 日本で実施される臨床試験に関する情報を公開するための、厚生労働省が運営するウェブサイトおよびデータベースシステム

【学会概要】
学会名:第7回日本メディカルAI学会学術集会
会 期:2025年6月27日(金)~28日(土)
会 場:国立京都国際会館
〒606-0001 京都府京都市左京区岩倉大鷺町422 
URL:https://pac-mice.jp/jmai2025/