2023.12.27
ニュース
【論文】軽度認知障害患者を対象とした、日本初の多施設共同医師主導治験COMCID研究の成果について、TRIの鍵村達夫、小島伸介、竹綱正典を共著者としてJAMA Network Open誌に掲載されました。

 
国立循環器病研究センター (大阪府吹田市、理事長:大津欣也、略称:国循) の脳神経内科 猪原匡史部長、脳神経内科医師 齊藤聡、データサイエンス部 山本晴子部長を中心とする研究グループがまとめた、軽度認知障害患者を対象とした日本初の多施設共同プラセボ対照ランダム化医師主導治験、「軽度認知障害患者に対するシロスタゾール療法の臨床効果並びに安全性に関する医師主導治験(COMCID研究)」に関する論文に、医学統計グループの鍵村達夫、竹綱正典、TRI 事業開発グループの小島伸介が共著者としてJAMA Network Open誌に掲載されました。
COMCID研究では、軽度認知障害 (Mild cognitive impairment: MCI)※1患者に96週間投与した際のシロスタゾール※2の安全性は示されましたが(シロスタゾール群82人、対照群84人)、MCIから認知症への進行を予防する有効性は示されませんでした。しかしながら、投与前と投与後24週の2時点で測定された探索的評価項目の結果ではあるが、シロスタゾールを投与された患者(67人)では、プラセボ※3を投与された患者(76人)に比べ、血液中のアルブミンと認知症の多くの脳で蓄積が見られる老廃物、βアミロイドの複合体 (アルブミン-Aβ複合体) の濃度が、治療前に比べ増加する傾向が示されました。これにより、シロスタゾールが脳内のβアミロイドを、血液中に排出することを促進させた可能性が示唆されました。

TRIは本研究において、プロトコル開発支援、統計解析、総括報告書作成支援を担当しました。

How to cite this article:
Saito S, Suzuki K, Ohtani R, Maki T, Kowa H, Tachibana H, Washida K, Kawabata N, Mizuno T, Kanki R, Sudoh S, Kitaguchi H, Shindo K, Shindo A, Oka N, Yamamoto K, Yasuno F, Kakuta C, Kakuta R, Yamamoto Y, Hattori Y, Takahashi Y, Nakaoku Y, Tonomura S, Oishi N, Aso T, Taguchi A, Kagimura T, Kojima S, Taketsuna M, Tomimoto H, Takahashi R, Fukuyama H, Nagatsuka K, Yamamoto H, Fukushima M, Ihara M; COMCID Trial Investigator Group.
Efficacy and Safety of Cilostazol in Mild Cognitive Impairment: A Randomized Clinical Trial.
JAMA Netw Open. 2023 Dec 1;6(12):e2344938.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38048134/

※1軽度認知障害 (Mild cognitive impairment: MCI)
「認知症とまでは言えないが、物忘れがあったりして正常とも言い切れない状態」です。正常な老化とは明らかに区別ができ、本人や、家族などの周りの人が認識できる程度の認知障害が現れます。
※2シロスタゾール
血液の中の血小板の働きを抑えることにより、血液が固まって血管がつまることを防ぎ、血栓の形成を予防する薬。またシロスタゾールには、血管を拡張させ脳血流を上昇させる作用があることが知られています。
※3プラセボ
薬としての有効成分を含まない偽薬

<関連URL>
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5651350/
(プロトコル論文)
https://www.ncvc.go.jp/pr/release/pr_40932/
(国立循環器病研究センターのプレスリリース)