非臨床開発支援実績
基礎研究から臨床開発への橋渡しや非臨床開発支援の事例を紹介します
様々な分野の知見を統合的に活用して社会課題に取り組む「総合知」の必要性が高まっています。TRIでは、新たな様々な分野・技術の可能性に期待し、それらの技術の医療展開を支援することで新たな医療イノベーション創出を目指しています。
国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)事業
「戦略的創造研究推進事業の医療分野における研究成果の持続的イノベーション創出基盤構築のための調査及び提案」
本事業では、JST支援によって創出された”非”医療分野の研究成果について、医療分野への展開を支援しています。2018年から2024年までに150を超える技術への技術調査、JST研究者へのコンサルテーションを実施し、それらを通じて医療研究開発の視点から考えられる研究開発上の課題抽出、その解決となる助言・提案を行ってきました。
中でも、多くのJST研究者から、医療分野への伝手が無く、医療展開に欠かせない医療ニーズの聴取や臨床研究実施体制構築が困難、といった相談が多く寄せられ、近年はこの点への支援についても強化を進めています。
TRIは、このような分野間・研究者間をつなぐ橋渡しを支援し、多様な技術・知見の融合による医療イノベーションの創出を目指すだけでなく、全国の研究支援機関、AROなどにも働きかけ、連携基盤の構築に取り組んでいます。

国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)事業
医療機器・ヘルスケアプロジェクト「医療機器等研究成果展開事業」
本事業では、医療機器基本計画(平成28年5月31日閣議決定、令和4年5月31日改定)等に基づき、AIやデータを活用した診断、低侵襲の診断・治療機器といった重点領域を意識した革新的・独創的な多様な技術シーズの基礎・応用研究開発を支援を行っています。
医療機器としての診断機器、治療機器、予防的介入を目的とした機器等を開発対象として、アカデミア、企業及び臨床医の連携を通じて、研究者が持つ独創的な技術シーズを活用した、「新しい」予防、計測、診断、治療を可能とする革新的な医療機器・システムの開発が目的です。
TRIでは2022年度以降、開発戦略(有効性、安全性に関する非臨床開発、製造等の開発パートナーの探索・マッチング等)、薬事・保険戦略の分野での支援を行っています。
| 年度 | 支援内容 |
|---|---|
| 2022年度 | ・誤嚥リスク検出装置 ・眼科領域におけるAI診断支援システム |
| 2023年度 | ・消化管内での使用を想定したインジェクタブルゲル ・医療用眼圧計測治療レンズ(継続中) |
| 2024年度 | ・胆管ドレナージ用ハイドロゲルステント(継続中) ・カリウムイオンセンサ |
| 2025年度 | ・尿道カテーテルの挿入システム(継続中) |
タキシフォリンを用いた非アルコール性脂肪肝炎治療薬の開発
2018年11月28日に京都医療センター臨床研究センター内分泌代謝高血圧研究部の浅原哲子部長がTRIを来訪され、研究相談を実施したことが共同研究の契機となりました。浅原部長の高脂肪食誘導性肥満モデルマウスに対するタキシフォリン治療の実験データの開示を受け、NASHを対象に開発すること(「本プロジェクト」)が発案され、まず、特許出願することになりました(2019年6月25日特許基礎出願)。現在、非臨床試験が進行しており、第Ⅰ相試験の準備を整えているところです。
この間、2019年6月日本国内の医薬品製造受託機関(CMO)を訪問して治験薬GMP調査を行うとともに、2019年8月にはロシアを訪問して原薬GMP調査を行い、いずれも各基準に則った製造が可能であることを確認しました。医薬品医療機器総合機構(PMDA)との相談は、2019年11月にRS戦略相談対面助言を終了しました。
● 非アルコール性脂肪肝炎(NASH)
近年、日本においても肥満の増加に伴い、非アルコール性脂肪肝(NAFLD)の有病者が、健診の約3割、2,500万人と急増しており、その約25%が非アルコール性脂肪肝炎(NASH)に、またその約25%が肝硬変に、更にその25%が10年で肝がんを発症すると推定されています。NASHは肝硬変・肝癌の最大のリスクであり、その予防・治療対策が喫緊の課題です。
● タキシフォリン
タキシフォリンはフラボノイドの一種で、酷寒のシベリアに群生するダフリアカラマツから抽出される低分子化合物です。ロシアでは脳血管循環障害、虚血性心疾患、末梢血管障害、2型糖尿病および合併症などを適応として使用され、欧州では健康サプリメントとして広く使われています。また、浅原部長らはタキシフォリンによる認知機能改善効果を見出しています。本プロジェクトで使用するタキシフォリンは、PMDAとの対面助言で合意された、不純物限度値を設け、高度に精製されたタキシフォリン(「PharmTax」)としています。
● 研究成果
高脂肪食誘導性肥満モデルマウスに対してタキシフォリンを12週間投与し、体重、肝重量・機能、脂肪合成・線維化遺伝子、及び病理学的観察を行いNASHの発症を検討しました。その結果、タキシフォリンは、耐糖能・インスリン抵抗性・脂質代謝に対する改善作用、褐色脂肪細胞による熱産生促進作用、肥満関連物質の血中レプチンの顕著な低下作用等によって、抗肥満・代謝調節作用を示した。NASHの指標としては、脂肪酸合成系を抑制し、肝臓への脂肪蓄積を抑制し、肝機能を改善するとともに、顕著な抗線維化作用を示した。これらの作用は、予防的にも治療的にも認められました。
細胞分離器具の開発(TRI独自シーズ)
近年、末梢血や骨髄液由来の単核球を用いた研究や再生医療等の開発が非常に増えています。従来法では骨髄単核球の採取では密度勾配法で分離・採取していますが、作業環境としてとしてクリーンベンチで細胞操作を行っているものの、開放系で細胞操作を行う煩雑さから、コンタミネーションによる安全性の問題が懸念されます。
そこでTRIでは、閉鎖系での細胞分離・回収が可能となるデバイスの開発を開始し、その特許出願(2021年7月28日出願)を行いました。現在、株式会社ニッポーの協力を得て、試作品の作成に向けて、研究開発を行っています。
細胞分離器具はTRIが研究開発を行っている、独自シーズです。
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