神戸医療産業都市推進機構 医療イノベーション推進センター(TRI)は、2022年4月に新体制1周年を無事迎えることができました。皆様からのご支援、ご鞭撻に対しまして、厚く御礼申し上げます。

 この1年間、弊センターでは、様々な新たな試みに取り組んできました。以下がそのトピックスになります。

 
(1) 海外アカデミア発の新型コロナワクチン治験の日本国内における開始準備、実施の支援を行いました。
(2) 海外の希少疾患患者団体が主宰する国際共同臨床試験の日本国内における開始準備を支援しました。
(3) 市販後調査と連動した学会主導の疾患レジストリデータベースの構築を2件行いました。
 

 TRIでは、学会・論文発表を通じて医療開発支援の成果を積極的に発信してきました。昨年度から特に重視しているのは、外部アカデミアの方から厳格なpeer reviewを受ける媒体で発信することです。これにより学術的かつ客観的な情報を提供していきたいと考えています。昨年度は上記(1)の支援業務について日本臨床試験学会で発表したところ、優秀演題に選定され、特別賞をいただくことができました。職員一同、今後の業務への大きな励みとしております。

 また、上記(2)のような希少疾患に対する臨床試験を支援させていただけることは、Orphanet Japanを運営しているTRIにとって非常に光栄なことであり、今後も希少疾患に対する診断・治療の開発に貢献していきたいという想いを強くしています。なお、Orphanet Japanにおける希少疾患情報の監訳には、AMED未診断疾患イニシアチブ(IRUD)臨床専門分科会の先生方から快くご協力をいただいており、ここにあらためて深謝申し上げます。

 TRIは、多くの学会と連携して疾患レジストリ構築を進めています。その活動の一環として、上記(3)では、研究者と企業が協働してリアルワールドデータを活用する臨床研究において、新たな支援スキームを開拓・実現することができました。

 このほか、これまで長期にわたって開発支援してきた以下の再生医療シーズが大きな成果を収めました。

 
(4) 京都府立医科大学眼科 外園千恵教授が開発された角膜再生医療製品「サクラシー」が製造販売承認を受けました。
(5) 神戸大学医学部整形外科 黒田良祐教授が弊センターと共同で開発された難治性骨折に対するCD34陽性細胞治療の医師主導治験が終了し、薬事承認申請準備に入りました。
 

 TRIでは、非臨床開発マネジメント業務にも注力しています。2018年度から継続中のJST「戦略的創造研究推進事業のライフサイエンス分野における研究成果の持続的イノベーション創出基盤構築のための調査及び提案」を今年度も受注するとともに、AMED「医療機器等研究成果展開事業コーチング研修及び企業マッチング業務に関する協働可能性」にも今年度新たに参画させていただけることになりました。早期段階にあるシーズ開発支援の経験・実績を今後も重ねていきたいと考えています。

 昨年度のご挨拶で「アカデミアの医師・研究者の先生方、医療関連企業の皆様方に伴走し、あらゆる疾患に対する、あらゆるフェーズの医療開発をご支援します」との決意を述べさせていただきましたが、以上のような試みを通じ、皆様から更なるご信頼、ご満足をいただけるよう、職員一同精進して参ります。

 まだまだ至らないことも多いかと存じますが、今後ともご高配賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

2022年4月吉日
センター長 川本 篤彦