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第1回バイオインフォマティシャン養成セミナー
医療とバイオインフォマティクス(1) 水島 洋
DNAの構造がワトソンとクリックによって2重らせんであるということが提唱されてからちょうど50年後の昨年、ヒトゲノム解読の全配列の実質的完了宣言が行われた。ヒトが生き、環境に適応して外界と戦い、子孫を残すことまでを含むすべての機能の設計図がこの約30億もの文字の中に隠されているわけであるが、これが読めたからといって、生命のしくみがすべてわかったわけではなく、これからどのようにしてこの情報を解析していくかという研究のスタートについたに過ぎないのである。

このようなポストゲノムといわれている時代において最も重要なのは、ゲノム情報と医療情報との関係である。がんをはじめとするさまざまな疾患は遺伝子の異常によって起こる。もともと持っている父親と母親から受け継いだ遺伝子によってその人の生まれながらの個性が決まり、その後の遺伝子の変化や進入によって疾患になることもある。原因遺伝子がはっきりしている遺伝病も多くなってきているが、これらはほとんど単一の遺伝子の異常による疾患である。多くの疾患はいくつかの遺伝子の異常の積み重ねによって起こることが多いものの、そのような多因子疾患で明らかになっているものはまだ少ない。疾患に関連する遺伝子に関しては、Online Mendelian Inheritance in Man
(OMIM : http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?db=OMIM ) 参照)。

そのような研究を進めるために必要になってくるのが、臨床情報とゲノム情報をいかに整理して関係を明らかにしていくかである。そのためには、SNPやマイクロアレイなどのゲノムに関連するデータを体系的に、大量に取得しなければならないし、また、臨床情報に関してもしっかりとした定義のもとに分類しなければならない。

個人化医療(Personalized Medicine, オーダーメイド医療、テイラーメード医療とも言う)という言葉を良く耳にする。これまでは、疾患ごとに治療方針が定められており、例えばある種のがんの治療の場合では、まずA処方を2週間行い、効かないあるいは副作用が強い場合にはB処方を行い、これもだめな場合にはC処方を行うという標準治療方針が決まっている。この方法では、AやBが該当しない患者さんにとっては長い間副作用に悩まされながらもがんは治らず、さらに進行してしまう場合もある。どの薬が効果があり、どの薬で副作用が出やすいのかということは、がんの種類や患者さんのもつ薬物代謝酵素の型によって変わってくる。これらは遺伝子を調べることによって投与する前にしらべることができるものであり、種々のがんや抗がん剤においてその関係を明らかにすることは、患者さんの負担を大いに減らすことになる。

第1部ではバイオインフォマティクスと医療に関する基礎的な解説を行い、このような目的のための医療情報学的な側面からのバイオイフォマティクスの解説を中心に行う。
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