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第1回バイオインフォマティシャン養成セミナー
バイオインフォマティックスとは〜その歴史と概要 坂本 憲広
1990年10月にヒトゲノム計画が始まり、遂に2003年5月14日にヒトゲノム解読完了が宣言されました。ヒトゲノム計画は、その開始当初には計画終了まで30年以上の時間が掛かるとの予測もありましたが、結果的にはその半分以下の期間で完了したことになります。その背景には、高速のDNAシークエンサーの開発を始めとするさまざまな分子生物学の実験手法の発達に加えて、バイオインフォマティクスの発展があります。

バイオインフォマティクスは、生命科学と情報科学とを融合した新しい研究領域で、米国NIHでは、"What is Bioinformatics? - Research, development, or application of computational tools and approaches for expanding the use of biological, medical, behavioral or health data, including those to acquire, store, organize, archive, analyze, or visualize such data."と定義されています。その始まりは1960年代終わりから70年代初めです。1970年のJournal of Molecular Biologyには、S.B. Needleman と C.D. Wunschによる、"A general method applicable to the search for similarities in the amino acid sequence of two proteins" が掲載されていますし、同年のEuropean Journal of Biochemistryには、A.J. Gibbs とG.A. McIntyre による、"The diagram, a method for comparing sequences. Its use with amino acid and nucleotide sequences." が掲載されています。

こうした配列データの比較アルゴリズムの研究と同時に、タンパク質や核酸の塩基配列データの収集、すなわちデータベース構築も行われるようになりました。最初にデータベース化されたのはタンパク質の配列であったと言われており、M.O. Dayhoffが1972年に"Atlas of protein sequence and structure"としてまとめています。このデータベースは現在PIR(Protein Information Resource)として公開されています。

一方、核酸のデータベース化は、1979年に米国Los Alamos国立研究所でGenBankデータベースの構築が始まり、1980年には欧州分子生物学研究所でEMBLデータベース、1984年には日本の国立遺伝学研究所でDDBJが構築されるようになりました。GenBankは現在、米国NLM(National Library of Medicine)のNCBI(Natinal Center fro Biotechnology Information)が運営していますが、EMBL、DDBJと国際協力して、国際核酸塩基配列データベース共同体を形成しています。GenBankは1982年に公開された当時は、606エントリ、680,338塩基でしたが、2002年には、22,318,883エントリ、28,507,990,166塩基となっており、20年で約4万倍に拡大しています。特に、1995年以降の進展に目覚しいものがあります。

バイオインフォマティクス研究の第一歩は、インターネット上で公開されているGenBankやGenomeNetなどのデータベースとその解析ツールであるblast(塩基配列相同性検索プログラム)、clustalw(マルチプルアラインメントプログラム)、GenScan(遺伝子予測プログラム)、HMMER(タンパク質モチーフ検索プログラム)を使いこなせるようになることです。そして、その理論的基礎である、データモデル、計算モデル、アルゴリズムを理解することです。こうしたバイオインフォマティクス研究はバイオインフォマティクスの発展のために不可欠です。しかしながら、これらの研究が基礎バイオインフォマティクスであるとすれば、ある特定の目的のため、たとえば、ゲノム創薬、ゲノム医療のためにバイオインフォマティクスを活用するための研究も今後重要となってきます。いわば、応用バイオインフォマティクスであり、分子生物学、計算理論などの基礎バイオインフォマティクスの知識に加え、対象領域、たとえば、分子医学、薬理学、人類遺伝学などの知識も必要とします。

本セミナーでは、先端医療の開発、実践を目指して、バイオインフォマティクスを活用して、疾患関連遺伝子の解明、新しい治療法の開発を行うための、基礎知識を提供いたします。
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